50周年を記念して、創健社社長・中村靖が各界のLOVE > FOOD > PEACEを実践しておられる方々にお話を伺いにいきました。首都圏を中心に約40店舗を展開するオーガニック・自然食品のグロッサリーストア「こだわりや」の藤田友紀子専務に、こだわりやさんと創健社との関係について伺います。
●100人中100人がお客さん
中村:私が社長になって19年目です。最初にこだわりやさんを知ったのはまだ管理部門にいた頃で、コンピューターの資料上でまず池栄青果さんという名前を知りました。実際にお店にうかがったのは営業に出るようになってからです。藤田さんと直接お話しさせていただくようになったのは多分社長になってからなので、この15年くらいでしょうか。
それまではうちのお得意先様という認識でしたが、こうやって藤田さんと、食事をしながら言いたいことが言えるようになるうちに、お店の見方もだんだん変わってきました。立地を見て、出入りするお客さんの様子から、我々のような商品をお買い上げいただくみなさんが何を求めているのかを知る場所として非常にいいなと感じています。
うちは商品の作り手の側ですから、売り場に来ているお客さんは何を考えていて、今欲している物は当然として、この先5年後10年後、そういう人たちや、そのお子さんお孫さんはどういう商品が欲しいんだろう、どういうことを望むんだろうということを絶えず想像します。
藤田:ご覧になっていて、お客さんの買い物カゴに入っているもので変化はありますか?
中村:これはこだわりやさんの話ではなく、普通のスーパーの話になってしまいますが、生鮮を買う人が減っていますね。こだわりやさんでも同じではないかと思いますが、いかがです?
藤田:弊社は、元は八百屋ですから野菜だけはしっかりと揃えたいと考えています。全体の販売の売り上げ構成比からすると野菜は常に25%程度あります。もちろんお店によって10%台も40%台もありますが。今は年中かぼちゃやブロッコリーを求められるなど、本来の旬とずれた野菜のサイクルもありますが、できれば露地で作られた旬の野菜を販売していきたいですね。野菜が売り場に多いと、旬が分かり、季節感や鮮度感でお店が華やかになるんですよ。
野菜を自分で調理すると、加工品の多くに添加物がいかに入っているかと気づくきっかけにもなります。せっかく野菜は無農薬や有機を買うならと、調味料もまっとうな、きちんとした伝統のある無添加のものを揃えて、合わせてお豆腐や牛乳などトータルで買っていただけるように品揃えしています。
中村:25%は高いですね。やっぱり、こだわりやさんに来るお客さんは、生鮮食品と基礎調味料を買って、ちゃんと料理を作る人なんですよ。以前、創健社が百貨店でお店を出していた時、うちのレジが地下食品売り場全体に占める割合は100人中だいたい1.5人と言われました。こだわりやさんならもう少し多いと思いますけどね。
ただ、私たちが扱っているような商品に興味がある人は、100人中数人程度、10人に届かないという実感があります。つまり全然マイノリティーです。今後その10人を相手に仕事をしていくのか、残りの90人に手を差し伸べることも考えていかなきゃいけないのか、よくそれを考えるんですけれど、藤田さんはどう思いますか?
藤田:お客さんは全員だと思っています。「有機、オーガニック、無添加に興味のある人」ではなくて、こういう食品は全員が食べて当たり前だと私は思い込んでいるんですよ(笑)。
●作り手、売り手が商品のファンになる
中村:藤田さんが「全員が買ってくれるようにしなきゃいけない」とおっしゃるのは確かに理想ですが、一方で実際にお買い上げいただくのは100人に数人というのが現実。こだわりやさんもうちもビジネスなので利益を出さなければなりません。啓蒙普及活動だけでこれをやっているわけではなく、理想を追い求めつつ、その辺の線引きにいつも悩みます。
藤田:少し前まではグルメで高くておいしいものを買っていたけれど、今は、お金で健康を買う時代になったと感じています。ですので特別なものでも興味がある人だけのものでもないんです。私もそうでしたが、女性の場合妊娠や出産がきっかけに食べものに気を使い始めますが、その子が3歳ぐらいになるとまた元の食生活に戻ってしまう方が多いですね、残念ながら。
お母さんだって楽したいし、友達もお菓子食べてるし、仕方がないところもあるので、そういうお母さんたちが子どもに食べさせたくなるような商品開発が必要ですね。まっとうな食材を使った簡単便利な商品を作ることが私たちの仕事かなと思いますね。キーワードは「子ども向け」と「少量」だと考えています。
中村:弊社もそうですが、こだわりやさんも高齢者のお客さんが多くいらっしゃいますよね。そういう意味では、高齢者の方たちも、これからだんだん簡単便利に向かっていくと思いますが、あえて「子ども向け」というのはどうして?
藤田:拝見していると、高齢者のみなさんは「老人食」や「介護食」は買いたくないんです。一方、化粧品やコスメでもそうですが、赤ちゃんの肌にいいものを大人も買いますよね? そこで子ども向けに、子どもが食べられるほど安心安全で無添加な商品を開発することを考えています。素材が良くて、口当たりが柔らかくて、ポーションが小さいものです。そうすれば子どもにも大人にも年配の方たちにも選んでいただけます。以前に比べて一品のポーションが小さいものを歓迎する方も増えましたし。
中村:商品をつくる側としては、ただでさえ普段「この商品はおいしいし、安全だし、いいんだけど高いのよね」と言われているので、さらに割高になってしまうと、なかなかチャレンジするのが難しいですね(笑)。
藤田::はい。それを高いと感じさせないような商品作りと店頭での紹介が必要だなと思っています。商品の素材を説明したり、こんなストーリーがあってと、店員が説明出来るようにしたいと思っています。まず店頭のスタッフが商品のファンになって自分が使うことも大事です。だからメーカーさんが店頭に来て下さると、まずうちのスタッフ全員に食べてもらってファンにして帰ってくださいと言うんです。
中村:弊社の営業にも同じように伝えていますが、まだまだ足りないところもあるかもしれません。お店のスタッフさんにファンになっていただけるよう、どんどん実践していきたいですね。思い返せば私自身も営業をやっていた頃は、やはり自分が好きな商品を売るのが得意でした。創健社としても社員自身が、愛情を込めて紹介できる商品をこれからも増やしていかねばと、決意を新たにします。
(この項、続く)
化学的な農薬や肥料、合成添加物などを極力含まない野菜をはじめ、主に国内産原料の食品と、日本産外国産のオーガニック食品を扱う専門店。1987年池栄青果(株)のこだわりや部門としてISP店オープン。1999年株式会社こだわりやへ。