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【50周年記念対談 Ⅰ 】生産者・菅原文子さん①マジメな農業と、マジメに応援する企業と

宮城県北部の半農半商の家で育った故・菅原文太さん「昔は誰もが無農薬農業だった、カンタンだ」

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50周年を記念して、創健社社長・中村靖が各界のLOVE > FOOD > PEACEを実践しておられる方々にお話を伺いにいきました。最初にお会いしたのは、山梨県で有機農業「おひさまファーム竜土自然農園」の役員を務める菅原文子さん。そう。故・菅原文太さんの夫人でいらっしゃいます。さて、どんな話が飛び出すでしょうか?

 

●完全無農薬の有機野菜を手軽に

中村靖(以下、中村):はじめまして。今日はよろしくお願いします。

 

菅原文子(以下、菅原): こちらこそ記念の対談にお招きいただき光栄です。化粧より食べ物の人生で(笑)、創健社のベジタブルカレーやミネストローネなど、ずいぶん日頃使っています。地震の備えの買い置きにも良いし、一石三鳥の食品が豊富ですよね。今日は長年の創健社ファンとして、お会いするのを楽しみに参りました。

おひさまファーム竜土自然農園での故・菅原文太さん

中村:おひさまファーム竜土自然農園さんには、菅原文太さんの生前の頃からお世話になっています。せっかくですので、おひさまファーム竜土自然農園さんについて、改めて、教えてください。

 

菅原: 宮城県北部の半農半商の家で育った夫が「昔は誰もが無農薬農業だった、カンタンだ」というので深く考えずに素直に(笑)「田園で暮らせるなんてうれしい」と思って農業を始めました。賛同してくださる友人たちもいて、東京に近いのも魅力で、山梨県北杜市に農地を借りました。2009年です。ちょうど今年で10年の節目、御社の歴史の5分の1にようやくたどり着いたところです。やっと少し農業がわかってきました。実に難しいってことが(笑)。

 

中村:無農薬で始めたのはどういうお考えがあったんですか?

 

菅原:きっかけは、夫が体を悪くして、以前よりもっと食べものに気を使うようになったことです。夫は野菜が大好きで、特にサツマイモとかジャガイモが好き。子どもの頃はイモ太というあだ名だったそうです(笑)。化学農薬、化学肥料を使い過ぎる今の量産を目指す農業に対しては、病気になる前から「昔の野菜の方がおいしかった」と言っていましたから、自然に無農薬になりました。

いつだったか「明日で日本沈没だとしたら、悔いなく何を食べたい?」と聞いたら「野菜かチキンカレーのうんと辛いヤツ」と言ってたくらいで、けしてグルメではありませんでした。もぎたての赤いトマトやキュウリ、イワシやサンマの塩焼きが一番のご馳走と思う世代です。自分たちが食べたいものを作るのが始めた動機ですが、今はみなさまを幸せにする野菜を作ることを目指して楽しく苦労しています。

 

中村:毎年天候も違いますしね。

菅原:赤い野菜は病害虫に強い気がします。唐辛子も作っているので冗談で「赤い農園」と言っています。経営もまだ赤字なので(笑)。コンパニオンプランツを取り入れて、無農薬一途でやっています。私もスタッフ二人も、農薬を使うストレスがありません。無農薬といっても、そのことに特殊な高級な意味付けはしていません。誰でも手に入る、季節に添った当たり前の農産物を作っていると思っています。

日本の農業は面積当たりの農薬使用量では、世界でもトップクラス、特にネオニコチノイド系農薬は脳や神経の発達に影響を与え、長い目で見ればこの国の力を弱らせてゆくのではないかと心配です。それも無農薬で野菜を作る動機の一つでした。微々たる生産量では、ドン・キホーテと言われてしまうかもしれませんが。

 

中村:ご苦労が多いですよね。生産者のみなさんには頭が下がります。

 

菅原:意外ですが、日本人は野菜の摂取量が欧米人に比べて少ないらしいですよ。昔の子どものおやつは、洗面器一杯くらい枝豆を食べたり、イモをふかしたりでした。今はたっぷりお野菜を食べる習慣が減ったのかもしれません。野菜が高いとニュースになりますが、作っているほうからするととても安い。デパ地下やスーパーの野菜価格も化粧品よりずっと安いはず。「命あっての物種」のことわざの通り、命を大切に、健康に暮らすためには食べ物と良い水は大切です。

 

●日本の農業生産者を応援する会社として

中村:生産者さんとの関係は、創健社にとって大事なものです。私が社長をさせていただいていて今年で18年目になりますが、就任直後は主原料を国産にしようと進めていたんですね。さらに有機のものを使わせていただくのがベストですけど、全商品というわけにはいきません。ご存知のようにそれだけで商品を作ったらとんでもない値段になってしまいますから。

同時に、農業離れが進む様子を見て考えました。普通の慣行栽培の農業でも、みなさん耕作を放棄して都会に出て来るなど、農業をやる方がどんどん減って、高齢化が進んでいるじゃないですか。日本で農業をやる人がいなくなったらどうしようもありません。

そこで創健社はまず、日本で農業をやっている人を応援する会社になろうと考えました。有機はもちろん、慣行栽培でも構わないから、とにかく原料はなるべく国産を使おうと言う主旨でずっとさせていただいていて。

商品開発もそれに沿って、リニューアル時に原材料の小麦粉を海外のものから国産に変えるなど、進めていました。残念だったのは3.11の福島の原発事故が起きて、消費者の皆さんが東日本で作っている国産原材料に対して強烈にネガティブな反応をされたことです。今でも「どこで作ってますか」というお問い合わせがありますが、当時はお客様相談室へのお問い合わせの半分以上が産地に関するものでした。

 

菅原:生産者としては心が痛みます。

 

中村:だからそれ以降は、放射能検査をしながら北関東・東北のものも使わせていただきつつも、やはりお客様に買っていただかないと商売になりませんので、西日本のものを入れたり、場合によっては、産地がきちっとしたものであれば海外のものを入れたりせざるを得ませんでした。

余談ですが、海外のものでもいいものはきちっと作られています。弊社が扱っているイタリア有機農法のジロロモーニシリーズのように、海外でもいいものはむしろ積極的にご紹介しています。ジロロモーニのパスタはイタリアでなければ作れない特別なパスタなんですよ。

原発事故は、原材料への関心が高まるきっかけにはなりましたが、日本の農業にとって、やはり残念なできごとでした。最近は少し落ち着いてきたので、改めて国内の生産者さんのお力に少しでもなれればと、国産原材料を使うようにはさせていただいているのですが、当社1社ではどこまでお力になれているか、と言うところです。(②に続く)

おひさまファーム竜土自然農園

2009年、故・菅原文太さん・文子さんご夫婦が山梨県北杜市で始めた農園。土づくりから始め、農薬や化学肥料は一切使用しない方針。食材の質と安全性と質にこだわる一流のシェフたちからも信頼を置かれ、農作物を納めている。農業を始めたい人への就農支援や、同様に農薬不使用にこだわる全国の農家の生産物の紹介・販売も行っている。