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【50周年記念対談】流通・藤田友紀子専務③スタッフが幸せであることが出発点

有機農業塾で農業研修の試み、1日畑に行くだけで、心が豊かになります。

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50周年を記念して、創健社社長・中村靖が各界のLOVE > FOOD > PEACEを実践しておられる方々にお話を伺いにいきました。首都圏を中心に約40店舗を展開するオーガニック・自然食品のグロッサリーストア「こだわりや」の藤田友紀子専務に、スタッフ教育に力を入れるわけなどをお聞きしました。

 

●伝えるべきことを伝えられる人を育てる

中村:藤田さんはスタッフの教育にも力を入れておられると聞きました。

藤田:私はスタッフが、幸せでないと、どんなにいい食品でもきちんと届けられるはずがないと考えています。だから、まずスタッフが幸せで楽しく仕事ができる仕組みを作りたいと思っています。今は毎月メーカーさんをお呼びして勉強会をしたり、料理教室を季節に2回したり、有機農業塾で農業研修したりしています。

スタッフと一緒に共有して知識を学んでそれを売り場に返していくという試みに力を入れていて、これには手応えを感じています。うちは会社としては一つですが、実際には店長たちは月に1回しか会えません。それが農業研修の畑で店長同士の会話が生まれたり、なかなか会えない新入社員たちと話ができたりします。そもそも、せっかく野菜を扱っているのに土をいじったことがない人がいるのは良くないですしね。

 

中村:弊社の社員も「有機カレーの素」を持参して農業研修に参加させていただきました。ありがとうございます。

藤田:はい。土に触れるとみんな心がきれいになるというか(笑)、しかも有機の畑なので土を触っても気持ちがいいし、土を踏むとふかふかしてなんて幸せなんだという気持ちになるんですよ! 1日畑に行くだけで、心が豊かになります。売り場に戻っても、自分で収穫したもののことはお客さんにも話したくなるし、お客さんにとっても聞きたい話ができるようになって、会話のいいきっかけになっています。

料理教室は動物性を使わない野菜料理教室をやっているんですけれど、パートさんの参加が多くて、家でやってみよう熱心にメモをとっています。弊社で販売している調味料を使うので、お客さんに調味料の使い方を説明しやすくなります。農業研修も料理教室も売り場でお客さんと交流する場に生かされていますね。

 

中村:見習いたいですね。

 

藤田::新しい商品が出るときにメーカーさんがよくいっぱいレシピをつけて来てくださるんですが、「レシピはもうネットに溢れているから、いりません」と言っているんですね。デザイナーやプランナーにお金をかけるなら、レシピではなくて、高いと言われないようなストーリーを、作り手の苦労でもデメリットでさえもいっぱい書いて伝えた方がいいと思います。読んでグッときて、ちょっと情が入って「これ買ってあげたい、作り続けてほしい」と思ってもらえるような商品が求められています。

 

●今のブームを追うのではなく先駆者として

中村:ところで今、大手の流通さんが主導してオーガニックスーパーが増えています。藤田さんは売り場を経営されているので、当然ある意味商売敵になるわけですが、どう考えていますか?

 

藤田::大歓迎です。至近距離でさえなければ、同じ駅でもいいかなと思います。お客さんは、この調味料はここ、お米はここと買い分けているので、近くにあってくれた方が、お互いの店で不足している部分を補えて共存できるかなと思います。それからオーガニックフードや自然食品に興味を持つ人がその地域に増えるのも歓迎です。

中村:50年前に創健社が始まった頃、まだ小学生の私は「お父さんは何の仕事をしてるの?」と聞かれるのが嫌で嫌でしょうがなかったんです。「自然食品」とか「無添加」なんて言っても「何それ?」って言われてしまうので。50年たって、今やコンビニでもスーパーでも、無添加やオーガニックという文字があふれていますよね。そういう意味では、私たちこの業界の仲間が広めようとしてきたことが、ようやく一つの区切りになったと思うんですよ。

昨年来日した、ジロロモーニ農業協同組合長のジョヴァンニ・バチスタ・ジロロモーニが「目指しているのはオーガニックの先のオーガニックだ」と言っていましたが、我々が目指すのも同じです。

50周年に絡めて言えば、おこがましいですけれど、創健社は30年後、50年後にも日本の食文化の中心にいなければと考えています。世の中の食生活はどう変わっていくか、どう変えていくかということを先読みして商品を出し続けます。それも、50年前同様、みなさんに「何それ?」って言われるくらいでなければいけないと思います。

 

藤田:先駆者は苦労しますね。まだ世の中にない、走りの商品を作らなきゃいけないから、まわりからはなかなか理解されません。でも楽しいですね、それは。「今、ブーム」や「今、注目」を追いかけるのではなくて、それより先ということですよね。

 

中村:そういう節目に来ているのかなと思います。オーガニックという考え方も、今は海外から輸入してきて真似しているだけですが、このままでは日本では根付かないし流行らない。歴史を見ていくと、日本は海外から入ってきた文化を1回取り込んでから、日本流にアレンジして出し直すのが得意でしょう? 創健社は日本独特のオーガニック文化が花開くのを担う先駆者でありたい。それは独りよがりではダメなので、藤田さんをはじめ、みなさんに共感していただきながら、一緒にやって行かなきゃいけないことだと考えています。

 

藤田:こんなにいろいろなものが進化しているのにさらに進化するって、どんな方向に行くのかなとすごく楽しみです。それを一緒に考えたり、創健社さんが引っ張って作ってくださったりして商品作りをご一緒できたらと思います。今こうして大手のスーパーでオーガニックのものが売れたりとか、目に触れることが増えてきたのも、創健社さんが一助になっていると思いますし、そういう商品をもっと増やしてほしいですし、私たちもその中から選ばせてもらいながら、一緒に広めたいですね。

 

中村:ありがとうございます。日本の食のあるべき姿を、少しでもでも早く現実的に提案します。弊社にしてもこだわりやさんにしても、それぞれの競合他社さんにしても、目指すゴールは同じだと思うので、機が熟したところで手を結べる方と協業していくことも考えています。我々がやっていることを、世の中に広めていくとか、例えば日本の農業をもっと発展させていくとか、そういうことが少しでも皆さんと共にできればいいなというふうに思っているので。

それは我々が一人でできることではなく、こだわりやさんみたいに消費者のみなさんと接点を持って商品をや情報を届けてくださる方々がいて初めできると考えています。藤田さんやみなさんに、「面白いこと言ってる。面白いもの出してきた」と言われる創健社にしたい、50周年を機に、また新たに100周年に向けて、そういう会社になっていきたいと考えています。今後ともお力添えをよろしくお願いいたします。

(この項、終わり)

 

株式会社こだわりや

化学的な農薬や肥料、合成添加物などを極力含まない野菜をはじめ、主に国内産原料の食品と、日本産外国産のオーガニック食品を扱う専門店。1987年池栄青果(株)のこだわりや部門としてISP店オープン。1999年株式会社こだわりやへ。