50周年を記念して、創健社社長・中村靖が各界のLOVE > FOOD > PEACEを実践しておられる方々にお話を伺いにいきました。記念対談の第3弾にご登場いただくのは首都圏を中心に約40店舗を展開するオーガニック・自然食品のグロッサリーストア「こだわりや」の藤田友紀子専務。まず、2017年に30周年を迎えたこだわりやさんのヒストリーと、今後について伺います。
●こだわりやの30年は挑戦の歴史
中村靖(以下、中村):弊社が50周年を迎えるということで、お世話になっている方々にお話を伺っているのですが、こだわりやさんも2017年に記念すべき30年という節目を迎えたばかりと聞きました。この機会に改めてこだわりやさんの沿革など聞かせてください。
藤田友紀子専務(以下、藤田): 1987年には、まだ「こだわりや」という会社はなく、母体の池栄青果株式会社が池袋ショッピングパーク(ISP)内に持っていた青果コーナーの片隅で、「大地を守る会」さんから仕入れた野菜や加工品を販売したのが始まりです。当時は、有機野菜への理解が少なく「見た目や形がよくなくても値段は高いし、よくわからないね」と受け入れられず、5年、10年かけてなんとか形になったそうです。
中村:確か藤田さんが入社した時はまだこだわりやさんじゃないんですよね。
藤田:そうです。株式会社こだわりやの創業が1999年で、池栄青果に入社しているんですよ。それまでの12年間は専門の管理部も経理もなくて、ほとんど2人くらいが仕入れから営業・販促まで対応していました。会社を設立して約18年で、ようやくこういうお店が支持していただけるようになり、成り立つようになってきたと思います。私の知る限りこの30年間で6回ぐらいISPのフロア内を移設していますが、店が好立地になったことを見ていて、時代がとても変わったと感じています。
中村:それがいまや40店舗近く展開されてますよね。実際に出店した数はもっと多いんじゃないですか?
藤田:はい。弊社の社長の方針もあり、出退店が多いです。今39店舗ですけれど、通算では67店になります。2017年はリニューアルが3店舗、出店が3店舗、閉店が2店舗と、目まぐるしかったです。取引先さんの皆さんのご協力のおかげでできたと思っています。過去には路面店も2、3回も挑戦しましたし、25年くらい前には新百合ヶ丘に「フェニックス」というオーガニックスーパーを出したんですが、時代が早すぎたようで1〜2年でクローズしました。その後は百貨店、駅ビルなどのテナントが中心です。積極的に出店してだめなところは思い切って閉める。それを繰り返しながら受け入れられる地域を見つけて今にいたります。
●ライフスタイルを提案する路面店の構想
中村:こだわりやさんの基本方針としては、路面店はやらないという印象があります。
藤田:以前はそうでしたが、実は今はやりたいと思っているんですよ。遠くない将来、できたら路面店にチャレンジしたいです。テナントの場合、数字のいい店でも百貨店や駅ビルの方針で退店を余儀なくされてしまうことがあります。お客さんから「やめないで」という声や「もう出店の予定ないんですか」という声をいただいて、やはり必要とされていたんだなとわかって、すごく嬉しい反面、悔しいです。求められているのに出なきゃいけないので。路面店ならそういうことがないですし。
また、商品戦略も今までとは違う方向が考えられます。やはり、百貨店や駅ビルでは販売面等での制約が多く、路面店では自由にいろいろなチャレンジが出来るんじゃないかと思っています。例えば今は物販だけですが、店内で飲食できたり、食以外にもコスメであったりトータルに生活全般の商品を取り入れられるようなことをしたいですね。
中村:今のこだわりやさんをベースにしながら、ただ食べ物を売るだけじゃなくて、もっとライフスタイル全般に、こだわりやさんが思い描くことを提案できる場所が欲しいと言うことですよね。
藤田:本当にそう思います。見た目だけのおしゃれではなく、本質や本物に出会える場所を作りたいですね。本物の食品やまっとうな生産者に会いたいと思ったら来てもらえるようなお店です。作り手さんがいて、運送する方がいて、弊社のお店があって、やっとお客さんに商品が届くという流れの中で、こだわりやはあくまでもお店という箱にすぎません。そこで提供するものは、やはり「ここならまっとうなものが置いてある、買える、食べられる」という信頼だと思います。
理想的には、「有機だから、無添加だから」という入り口で商品を選ぶのではなくて、食べてみたら「おいしいね」と思って調べると、「これって無添加なんだ、有機なんだ、国産なんだ」と気づくというような順番がいいなといつも思っているんですよ。
中村:そうですね。いくら能書きを一生懸命説明しても、おいしくないと続かない。多分、親の説教のように右から左に聞き流すだけになってしまいます。試食でもいいので、ひと口実際に食べてもらって「ああおいしい」って感じて、それからいろいろとその商品にまつわる物語を見た時に、「だからこういう味なんだ」とわかるのが望ましいですよね。
藤田:それがすごくいい流れだと私は思います。「これは自分にとってなくてはならない食べ物」と感じて「買い続けたい」と思ってもらって「人にあげたい」と考えるようになる。その3つが繋がって行くと、長く使ってもらえるかなと思っています。実は3000円、5000円のギフト商品よりも、人にちょっとあげる400〜500円のお土産の方が買ってもらえるんですよ
実際に、もらった人が「どこで買えるの?」とメーカーさんに問い合わせが入ったりすることも多いようで、「ここで売ってますよ」と言ってくださって広まることがあります。そうやってオーガニックや自然食品を食べる方たちが増えるといいなと思いますね。ですから「ちょっとお友達にあげるんだ」みたいな商品がもっと増えるといいなと期待しています。
中村:そういえば、以前にうちの娘のお友達のお母さんが、うちの娘に「メイシーちゃんのおきにいり」のお菓子を持たせてくれたことがありました。私がメイシーを出している会社の社長ということは全然知らなかったらしいんですが。そういえば、その方は近所のこだわりやさんでいつも買っているというお母さんでしたよ。
藤田:すごいですね。偶然の出会いと言うか、嬉しいですね!
中村:笑っちゃったけど(笑)。
(この項、続く)
化学的な農薬や肥料、合成添加物などを極力含まない野菜をはじめ、主に国内産原料の食品と、日本産外国産のオーガニック食品を扱う専門店。1987年池栄青果(株)のこだわりや部門としてISP店オープン。1999年株式会社こだわりやへ。