健康に優しい 7つの提案

3.雑穀ごはんや玄米、発芽米などを食べる - 日本の食文化のベースは雑穀と玄米なり -

古来より日本では米、麦、粟(あわ)、豆、黍(きび)を「五穀」と呼び、収穫の時期には「五穀豊穣」を願った祭りが全国各地で繰り広げられました。私たちの祖先は、縄文の時代から、お米と雑穀をベースに丈夫なからだを育み、日本独自の食文化を作り上げてきたのです。

栄養のつまった玄米は命の源

さて、お米というと、真っ白い精白米をイメージしがちですが、そうではありません。田んぼでとれた米粒から籾殻(もみがら)を取り除いただけの「玄米」のことです。玄米は生きている穀物といわれます。そこから芽が出て、やがて実をつける種子、つまり「命の源」といえます。ちなみに、「白米」は玄米から、胚芽とぬか層を取り除いたものです。胚芽とぬか層にはビタミン類、食物繊維、ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウムなど)、必須アミノ酸、アミノ酸、微量栄養素、抗酸化物質など、からだに大切な栄養がぎっしりとつまっているのに、なんとももったいない話です。

江戸時代の主食は雑穀

また、ほんの数年前まで、「アワ・ヒエ・キビは鳥の餌」などと見向きもされなかった「雑穀」もここ数年、その栄養価の高さが注目され、人気が高まっています。雑穀には、たんぱく質、ビタミンB、ビタミンB、食物繊維、ミネラルがたっぷり。とりわけ現代人に不足しがちなマグネシウムがふんだんに含まれています。ちなみに、お米の歴史は古いですが、江戸時代までは大名や裕福な人たちだけが主食とし、庶民は雑穀を食べていたといわれています。米が主食となったのは明治以降のことです。

バランスのとれた主食が健康の要

主食はからだの大本となるもの。何を選ぶかはとても大切です。生命力が強く、栄養価値の高い玄米をぜひ、主食に取り入れたいものです。玄米に抵抗があるという時は、胚芽米、分づき米(三分、五分、七分)を利用するのがいいでしょう。そして、これらにさまざまな雑穀を加えた「雑穀ごはん」で、バランスのとれた栄養たっぷりの主食を毎日、食べるのが健康の基本です。また、近年急速に普及してきた発芽玄米もお薦めします。玄米よりも食べやすくて、食味も良く、ギャバ(γ-アミノ酪酸)、IP-6(フィチン酸・抗酸化力を持つ)などが、玄米より増加している優れものです。一般的には、発芽玄米1に対して白米2の割合で炊飯して食べられています。なお、胃の消化機能が未成熟な幼児には、玄米は控え、胚芽米や分づき米、発芽玄米、雑穀ごはんがいいでしょう。

雑穀 - 豆知識

Q
基本的な栄養素について教えてください
タンパク質、糖質、脂質が三大栄養素
まずは栄養の基礎についてお話したいと思います。からだを作り、動かすためのエネルギー源になる重要な栄養素は、タンパク質、糖質、脂質の3つ。これを、三大栄養素といいます。タンパク質は、からだの筋肉や骨、血管、酵素、免疫物質、ホルモンなどからだの組織を作っています。肉や魚介、大豆、大豆加工品、乳製品、卵などに含まれます。糖質はからだを動かす主要なエネルギー源であるとともに、脳を活動させるために必要不可欠なものです。からだのバランスを調整するホルモンの分泌にも関係しています。米、麺類、もち、パン、サツマイモ、砂糖、ハチミツ、果物などに含まれます。脂質はエネルギー源であり、貯蔵脂肪となって、体温維持やエネルギー不足のときに役立てられます。植物油、魚、動物性油脂などに含まれます。

からだに不可欠なビタミン類

これに対して、ビタミンは糖質や脂質、タンパク質のように、血や肉になったり、エネルギー源になったりする栄養素ではありません。しかし、わずかな量で、エネルギー代謝を活性化し、免疫力を高め、からだの機能強化やバランス調整を行うなど、からだにとってなくてはならない栄養素です。現在、確認されているビタミンは、約25種類(ビタミン用作用物質を含む)あり、これらは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンとに大きく分けることができます。そのうち、主なビタミンには次のものがあります。
ビタミンA胃腸や気管支、目、鼻、のどなどの粘膜を強化。皮膚の状態を整える。視力障害を防止。多く含まれる食品:レバー、うなぎ、β-カロテンを多く含む緑黄色野菜、みかんなど
ビタミンB1 糖質をエネルギーに変える。ごはんやパン、砂糖などの糖質の分解を助ける。疲労物質である乳酸を分解し、疲労を回復。精神安定にも働く。
多く含まれる食品:魚介類や豚肉、豆類、穀物、野菜など。
ビタミンB2 脂質の代謝を促進し、細胞の再生を促し、粘膜を保護する。「発育ビタミン」ともいう。
多く含まれる食品:豚肉、レバー、大豆や他の豆類、落花生、玄米ご飯、胚芽米、小麦胚芽など
ビタミンB6タンパク質代謝を促進。アミノ酸の生成・分解促進に不可欠。
多く含まれる食品:かつお、まぐろ、さけ、さんま、牛レバー、さば、バナナ、いわしなど
ビタミンB12葉酸と協力して赤血球の産生にはたらく。神経細胞内のタンパク質や脂質、核酸の合成を助け、神経系を正常に働かせる。
多く含まれる食品:レバー、かき、さんま、あさり、しじみ、にしん、いわしなど
ナイアシン皮膚や粘膜を丈夫にする。脳神経の働きを助け、血行をよくする。
多く含まれる食品:たらこ、かつお、まぐろ、あじ、さば、なまり、ぶり、レバー、玄米ごはんなど
パントテン酸副腎皮質ホルモンの合成や免疫抗体の産生にはたらく。善玉コレステロールを増やす。
多く含まれる食品:レバー、子持ちがれい、たらこ、いわし、納豆、干し椎茸など
葉酸ビタミンB2と協力しあい、赤血球の産生や抗体の産生にはたらく。遺伝子物質DNA合成に不可欠。
多く含まれる食品:レバー、菜の花、枝豆、からし菜、春菊、ほうれんそう、かぶの葉など。
イノシトール細胞膜を構成するリン脂質の成分となる。脂肪の肝臓への過剰蓄積を防ぐ。
多く含まれる食品:発芽玄米、小麦胚芽、キャベツ、さつまいも、グレープフルーツなど
ビタミンC細胞の合成組織であるコラーゲンの合成に働き、血管や皮膚、粘膜、骨を強くする。免疫力を強め、抗酸化作用、抗がん作用、抗ウイルス作用、解毒作用がある。血中コレステロールを下げる。
多く含まれる食品:アセロラ、グァバ、いちご、みかん、ネーブル、柿、キーウイ、グレープフルーツ、はっさく、いよかん、メロン、みかん、赤ピーマン、菜の花、芽キャベツ、ブロッコリー、かぶの葉、西洋かぼちゃ、からしな、ほうれんそう、さつまいもなど
ビタミンE強い抗酸化作用で、活性酸素からからだを守り、老化・生活習慣病を予防する。毛細血管の血行をよくし、心疾患を予防する。
多く含まれる食品:にじます、うなぎ、あゆ、はまち、子もちがれい、たらこ、アーモンド、ひまわりの種、植物油、モロヘイヤ、だいこんの葉、小麦胚芽など。
ビタミンDカルシウムとリン酸の吸収を助け、強い歯や骨を作る。
多く含まれる食品:さけ、にしん、かわはぎ、いわし、さんま、うなぎ、いさき、きくらげ、しいたけなど
ビタミンQ
(コエンザイムQ)
新陳代謝を促進。強い抗酸化作用をもつ。
多く含まれる食品:レバー、モツ、牛肉、豚肉、かつお、まぐろ

からだの機能を維持・調節するミネラル

ミネラルは、からだの機能の維持や調節に欠かせない微量栄養素です。ビタミンとともに三大栄養素の働きを助け、心身のバランスを保ちます。ビタミンは元素からつくられる有機化合物ですが、ミネラルは元素そのものです。元素はあらゆるものをつくる基本の単位で。主なミネラルは次のとおりです。
カルシウム健康な骨と歯をつくり、健康を維持する。筋肉の活動を調整し、細胞の分裂、分化を促す。
多く含まれる食品:干しえび、どじょう、わかさぎ、煮干し、ししゃも、乳製品、豆腐など大豆製品、ひじき、きざみ昆布、ごま、緑黄色野菜など
赤血球に含まれるヘモグロビンの成分となる。不足すると鉄欠乏性貧血を招く。
多く含まれる食品:レバー、あさり、ひじき、かつお角煮、がんもどき、大豆、小松菜、きな粉、きくらげ、納豆、だいこんの葉など
亜鉛DNAやタンパク質の合成にはたらき、細胞の新生を促し、ホルモン分泌を促進する。
多く含まれる食品:かき、牛肉、豚レバー、うなぎ、貝、そば粉、たらこなど
マグネシウムカルシウムとともに骨を強化し、筋肉の活動を調整する。
多く含まれる食品:アマランサス、アーモンド、大豆、ひじき、玄米ご飯、わかめ、干しえび、油揚げ、納豆、きな粉、豆腐、いわし、ごまなど
セレン抗酸化作用や抗がん化作用を持つ。老化やがんを抑制する。
多く含まれる食品:わかさぎ、いわし、かれい、ねぎ、かき、玄米ご飯、小麦胚芽など
カリウム細胞内の水分バランスを調節。ナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる作用がある。 多く含まれる食品:昆布、大豆、さといも、トマトジュース、アボガド、おぼろ昆布、さつまいも、ひじき、納豆など

からだの老廃物を排出する食物繊維

穀類、いも、豆、野菜、果物、海藻、きのこなどに多く含まれる食物繊維。その定義は「人間の消化酵素で消化されにくい成分の総称」とされています。栄養素の吸収をゆるやかにしたり、老廃物やコレステロールなど有害な物質を排出したりと、からだにとって重要なはたらきをしています。糖尿病などの生活習慣病やがんを予防するはたらきもあります。また、便秘予防にも効果があります。
Q
雑穀ってなんですか?
あわ、ひえ、きびなどイネ科の穀物の総称
雑穀とは、粟(あわ)、黍(きび)、稗(ひえ)、もろこし(ソルガム、コウリャン、タカキビ)などイネ科の穀物の総称です。これら雑穀はビタミンB類やミネラル(カルシウムやカリウム、鉄分など)、食物繊維を豊富に含み、白米をはるかにしのぐ栄養価があります。お米に混ぜて炊き込んで「雑穀ごはん」にするのが一般的ですが、野菜スープに雑穀をまぜた「雑穀スープ」も美味です。雑穀を上手に利用して、不足しがちなミネラルを手軽に補給しましょう。
Q
分づき米って何ですか?
ビタミンやミネラル豊富なぬか層が含まれたお米
分づき米(ぶづきまい)とは、玄米のように未精製ではありませんが、白米ほど精製されてはいないお米のことです。田んぼで収穫された米粒から、外側の籾(もみ)をとったものが玄米です。一般に、玄米からぬか層などを3割ほど取り除いたものを「3分づき米」、5割取り除いたものを「5分づき米」、7割取り除いたものを「7分づき米」といいます。白米よりもビタミンやミネラルが豊富です。玄米のように圧力釜を使わず、ふつうの炊飯器で炊くことができます。ただし、水に浸す時間は、白米よりも長めにします。スーパーマーケットでは扱っていないことが多いですが、お米屋さんに行けば好みの分づき米を精米してくれます。