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【50周年記念対談 Ⅰ 】生産者・菅原文子さん③100周年に向け、生まれ変わる食のあり方

家庭の味と言われるような、子どもの頃に食べた味が身についているのは幸福だと思いますよ。

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山梨県で完全無農薬・有機農業の「おひさまファーム竜土自然農園」で野菜作りにとりくむ菅原文子さんとの対談の最終回。お弁当を見ると食の変遷が見えてくるという話から始まります。

 

●お弁当に見る現代食文化論

中村:菅原さんは、今の「食」の状況をどんな風にご覧になっていますか?

 

菅原:一概に言えませんが、ゼイタクとムダが過剰に見えます。私は1942年生まれですけど、中学生の頃のお弁当は、私も同級生もほとんどご飯で、上に梅干しと昆布が乗っていて、その程度でした。みんな似たようなものだから恥ずかしいことなんかありません。今は大変でしょう? パンダやなんかの模様にしたりして、毎日がお花見のお弁当みたい。

 

中村:キャラ弁ですね。うちは娘が中学生で、家内が弁当を作っているんですけど、弁当箱の中で小分けするカップやバランもピンクや黄色で、楊枝も可愛いんですよ。私らの頃はアルミ箔の銀色しかなかったですが。

 

菅原:子どもが少ないからできるんでしょうけど。外見も大事ですが、中身がもっと大事です。人間と一緒です。

 

中村:一方で、学校に来る途中で、コンビニのお弁当やおにぎり、サンドイッチを買って、それをお昼に持って来る子も結構いるみたいですよ。

 

菅原:そんなところにも格差があるんですね。悲しいです。日本人の幸福度って高くないようです。先進国で上位10位に入っているのはカナダだけ。便利な暮らしにもいい点はあるけれど、ゆっくりと不便な暮らしもいいもんです。

 

中村:今のお弁当って冷凍食品が当たり前です。お弁当を作る人も働いているわけで、早起きしなきゃいけないから、大変なんですね。うちは子どもが冷凍食品を入れると嫌がるから手作りしていますが。

 

菅原:大事なことだと思います。食べ物は生命維持に関わるから、家庭の味と言われるような、子どもの頃に食べた味が身についているのは幸福だと思いますよ。

 

中村:今はほとんどのものに化学調味料が入っていますよね。だからもう素材の味とかダシの味じゃないんですよ。みんな化学調味料の味に慣れちゃっていて。それがないと物足りないと言う。

 

菅原:それは本当の味がわからなくなってしまう亡国の食性です。おいしさは感動や幸福感につながると思います。おいしくない会食だと仲良くなれないらしいですよ。おいしいと記憶に染み込んで、あいつはいいやつだみたいになる。

 

中村:科学的に証明されていないので断言できませんが、今、キレる子が多いと言われているのは、食べ物のせいだと感じます。実際、中学校で給食を玄米と野菜中心に変えたら、何年かで問題が減ったという取り組みをされている学校もあるようですし。

 

菅原:そう思います。 キレやすい子どもは、その子自身も幸せではないし、可哀想です。医食同源と昔から言いますから、いい食べ物を食べていたら、子どもたちの心身も健康になるし、それが一番の幸せです。国家の医療費負担も減るのではないでしょうか。 新鮮こそ一番のサービスと思って、うちはほとんど朝採りでやっています。

 

中村:バランスよく食べるのが一番いいと、私も機会があるとお話しさせていただいています。受け売りの話ですが、人間の歯の構造は、奥歯は穀物、犬歯は肉や魚、前歯は野菜をそれぞれ食べるものだから、その本数の割合で食べるのがいいそうです。

 

●塾より食?! 次の世代に生きる食文化を考える

中村:次の50年を考える上で、「これからの日本の食」について社内でも議論しています。生産者さんの立場から見えるヒントをいただけるとありがたいです。

 

菅原:発酵学の小泉武夫先生にお聞きしたことですが、納豆は最強の健康食だそうです。出張にも持参されるとか。アメリカでも納豆が流行っているらしいです。干し納豆は酒のつまみにも子どものおやつにもなり、創健社の商品ならさらに安心。このアイディア、投書箱に入れておいてください(笑)。

子どもつながりでは、教育の無償化よりも先に、義務教育期間の学校給食の無償化が先だと思います。食は親の所得に影響されますが、学校でとる食だけは、安全で美味しい食事を、子どもたちが公平で平等に享受できるような社会であってほしいと思います。

良質な食品を提供してきた創健社さんのような会社が、学校給食にも知恵を出していただければと思います。子どもに聞くと「給食はマズイ」と言います。

学校給食は教育委員会が決めるようですが、教育委員会は教育の専門家で、食の専門家ではないですから、いい食品を提供できる民間企業をもっと活用したらいいと思います。大量生産の大食品会社ではなく、良質な食品を適量生産しているような、御社のような食品会社は全国にあるでしょうから、手を結んで日本中の先生も生徒も笑顔になって、学校が楽しい場所になるような給食をお願いします。給食が「まいうー!」になれば、登校拒否も減りますよ。それが一番の「子育て支援」です。学歴より食歴、化粧より食べ物。食事が美味しいと、誰も笑顔になります。夫婦喧嘩もしなくなります(笑)。

 

中村:確かに、一番いいものを食べて欲しいのは、子供と病人ですね。ところが、学校の給食と病院の食事の予算が低いんです。うちも給食をやっている会社から商品の引き合いがあって、実際使ってくださるところも一部ありますが、だいたいは、ほぼ高いと言って却下されます。

 

菅原:今は同じ形で傷一つもないものを並べて、当たり前みたいにしていますよね。そのためにたくさん廃棄して出荷価格の3〜4倍の値段になる。そういう世の中だから、ちょっと変わった子を受け入れなくなる。一人一人にとって幸せではありませんよね。食はその時代の文化にも通じていると思います。

 

中村:同感です。やはり「うちが食を通して文化を作るんだ」くらいの思いを持って全社員が取り組まなければと思います。

 

菅原:社員がみんな広告塔ですね。「どちらにお勤め?」「創健社です」「だから元気で健康で、肌もきれいなんだ」という風に。やることはいっぱいありますね、社長。

 

中村:はい。まず自分が自分たちのできることを、菅原さんの所は菅原さんのできること、うちにはうちのできることきちっとやって、共感できる人たちがいたら、一緒に協力して、その輪を少しずつ広げていくしかないと思っています。

菅原:私がいま考えているのは、野菜を鉢やプランターで育てる「ベジタブル・ガーデニング」を流行らせたいです。レタスなんか外側からつまんで行くとまた出て来る、それだけでも楽しいですしね。家庭で野菜の食料自給率をあげるみたいなのも楽しい(笑)。

 

中村:先が楽しみになってきました。長生きする予定で「110歳まで生きる」といつも言っているんですけれどね。110歳まで生きるとですね、ちょうど創立100周年を見届けられるので。それを見届けてからあの世に行きたいな、と。

 

菅原: 今日お話しさせていただいて、ますます創健社の食品に信頼が生まれました。私は100歳は無理ですが(笑)、創健社のカレーを食べて、楽しみながら「まいうー」な野菜を作るように頑張ります。中村社長なら100周年、間違いなしです。

 

中村:一つの私の人生目標です。(この項終わり)

おひさまファーム竜土自然農園

2009年、故・菅原文太さん・文子さんご夫婦が山梨県北杜市で始めた農園。土づくりから始め、農薬や化学肥料は一切使用しない方針。食材の質と安全性と質にこだわる一流のシェフたちからも信頼を置かれ、農作物を納めている。農業を始めたい人への就農支援や、同様に農薬不使用にこだわる全国の農家の生産物の紹介・販売も行っている。