健康コラム

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保存料のはなし

食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高めるために使用される添加物「保存料」とはなんでしょう?

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 現在食品添加物は、約1500種類あるとされ、食品添加物は、食品衛生法の食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物とされています。ここで言われる保存の目的は、食品の腐敗や変色の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高めるとされています。

 2020年7月16日より、「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」を踏まえ、食品表示法が一部改正され、食品添加物の用途名(甘味料、着色料及び保存料)及び一括名(香料)について、「人工」及び「合成」の用語が削除され、食品表示基準に規定されている用語だけでは、どのようなものが使用されているか見ただけではわからなくなってしまいました。

 今回は、食品添加物の中でも、保存料として使用されるものに焦点を当ててみていきましょう。

 使用目的や効果が「保存料」の場合、食品添加物名と一緒に「用途名」が併記されています。一括表示の原材料欄に、「保存料」と用途名が表示されていますので、見つけやすいですね。

 ちなみに使用目的で用途名の併記が必要なものは、甘味料・着色料・保存料・増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤又は防ばい剤があります。

 保存料は、食品の腐敗や変色の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高めるので、本当に必要なものに・・・。より安心できる物質が必要な分だけ入っていると良いのですが、入っている量まではわからないので心配ですよね。

 しかし、保存料は物質名が表記されていますので、自分で原材料を見て判断できます。使用していないものが一番ですが、他に選択肢がないときには、気を付けたい保存料の物質など把握していることが重要ですね。

 そこで、一般的に保存料として良く使用される食品添加物をご説明します。

保存料の種類

安息香酸、安息香酸Na(指定添加物)

 エゴノキ科アンソクコウノキの樹脂にも含まれますが、現在は、ほぼ化学的に合成されています。水に良く溶けて、各種の微生物に対して増殖を抑制する効果があり、食品のpHが低い(酸性が強い)ほど効力が高くなります。(キャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ、しょう油。安息香酸Naは、菓子製造の果実ペースト及び、果汁にも使用できます。安息香酸Naは、食品に含まれるビタミンCと反応してベンゼン(発がん性物質)に変わるとされています。

 平成18年7月28日には、厚生労働省医薬食品局食品安全部からも注意喚起されています。なお、厚生労働省職場の安全サイトによると、安息香酸は、重篤な眼の損傷生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い、長期にわたる、又は反復ばく露による上気道の障害のおそれとされています。安息香酸の一日の摂取許容量(ADI)は82.5mgとされています。

参照:職場のあんぜんサイト:化学物質:安息香酸 (benzoic acid)

ソルビン酸、ソルビン酸K(指定添加物)

 ナナカマドの未成熟果汁中に存在するものですが、現在は、ほぼ化学的合成品が使用されています。抗菌力はさほど強くはありませんが、水に良く溶け、カビ、酵母、細菌と幅広い効果があり、さまざまな食品に用いられています。(チーズ、魚肉,練製品、食肉製品、魚介乾製品、つくだ煮、煮豆、しょう油漬、漬物など)。ソルビン酸は、亜硝酸と反応して変異原性物質や発がん性に変わるとされていましたが、 厚生労働省の平成20年の発表では、発がんリスクはないと発表されています。

しらこたん白抽出物(既存添加物)

 サケの精巣(しらこ)の中にあるプロタミンやヒストンという特殊なたんぱく質を抽出したものです。微生物が増えることによって生じるネバネバの発生を遅らせる効果があります。魚肉、練物製品、調味料、魚肉、練物製品に使用した場合、塩味を和らげる効果があります。

保存料以外の用途名が明記されるもの

防カビ剤(防ばい剤)

 食品の保存性を高めるには「保存料」が使用されますが、カビを防ぐ目的で使用する添加物は特に区別して「防カビ剤」と称します。

 カビの字は「バイ」とも読むので、「防ばい剤」とも呼ばれ、輸送中のカビを防ぐ目的で使用されます。(柑橘類、バナナなど)

農薬が添加物扱いとなって、いわゆる「ポストハーベスト」と言われるものでもあります。

 例えば、アメリカから輸入される一部のかんきつ類には、OPP(オルトフェニルフェノール)というポストハーベスト農薬が表面に塗布されています。輸送の途中で、果物が腐敗して、駄目になってしまうのを防ぐためです。かんきつ類以外での使用は認められていません。

 OPPは、日本で農薬としての使用は禁止されていますが、食品添加物としての使用は認められています。「農薬では使えないのに、食品添加物では許可されている」とてもおかしな話ですが、日本では、毒性が高いことから、1969年にOPPの農薬使用を禁止、しかしその一方で、輸出国のアメリカや輸入果物を扱う業者から、猛抗議を受け、アメリカでは、OPPの使用が認められており、OPPを使わないとカビによる腐敗を防ぐことができないので、果物輸入業者は、商売に大きな影響を受けることがあり、日本政府はOPPを食品添加物として認めざるをえませんでした。

酸化防止剤

 酸素が原因の酸化による変質を防ぐもの。皮をむいたリンゴ、お茶の変色による酸化に対しては、ビタミンC(アスコルビン酸)、油脂類はビタミンEやトコトリエノール、次亜硫酸塩は主にワインの酸化防止として使用されますが、保存効果、漂白剤としても利用されます。これらを酸化防止目的で使用した場合、用途名と物質名の併記となります。酸化防止剤(ビタミンE)など。

 また、油に使用される酸化防止剤として、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)とBHT(ブチルヒドロキシトルエン)は、化学的な合成で得られた酸化防止作用を有する代表的な物質です。いずれも酸化防止作用がありますが環境ホルモン的作用もあるとされ、最近では、ドックフードなどのペット用のエサにも含まれているとの事です。

保存料には該当しませんが保存性が向上するもの

日持ち向上剤

 業界では日持ち向上剤と呼んでいますが、食品衛生法には「日持ち向上剤」の表示はありません。保存性の低い食品に数時間あるいは数日間といった短期間の微生物による腐敗を抑える目的で使用します。日持ち向上剤のグループはそれぞれの物質名で表示されます。

pH調整剤

 食品のpHを調整することによって、食品の日持ちが良くなります。寿司、酢漬けが代表です。酸性が強くなると酸味が生ずるので、酸味を感じないpHに調整します。主に酸味料とそのナトリウム塩が組み合わされて使用されています。

その他の日持ち向上剤

【指定添加物】

 酢酸、酢酸Na、グリシン(アミノ酸)、ビタミンB1、グリセリン脂肪酸エステル(乳化剤)など。保存料ほどの効果はないです。コンビニ弁当、惣菜ではグリシン、酢酸Naが多用され、このグリシンは近年、睡眠に不安がある方にと、このグリシンを使った機能性表示食品が多く出回っています。グリシンは、味覚など神経に作用するとされています。

 また、即席麺、しょうゆにはビタミンB1、乳化剤とて保存効果のあるグリセリン脂肪酸エステル(特に中鎖脂肪酸のグリセリンラウリン酸エステル)、シューガーエステルがあり、缶コーヒー、飲料に使用されています。乳化油脂が含まれていない飲料の「乳化剤」表示はこれらです。

【既存添加物】

 リゾチーム(酵素)、茶抽出物、イチジク葉抽出物、モウソウチク抽出物、エタノール(醗酵法に限る)など。

 これらの物質は、普段家庭で調理する際には使わないものかと思います。しかしながら加工品などは、1日でも長く保存が効いて、便利に使用できるように作られています。便利さが添加物の量を増やしていると言っても過言ではないような気がします。自宅で何かを召し上がるときぐらいは、体に取り入れなくてもいいものは、避けていきたいですよね。

参考文献:一社)加工食品診断士協会会報誌No.26、28