健康コラム

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鉄のはなし

鉄は、私たちの身体に必要な微量ミネラルの一種です。

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鉄は、私たちの身体に必要な微量ミネラルの一種です。

 鉄分は身体の中に約3g~5gほどあるといわれており、そのうち約65%~70%は血液中のヘモグロビンや、筋肉のミオグロビンに多く存在します。残りは貯蔵鉄として、肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられます。

血管
筋肉

 鉄分が不足すると全身に酸素が十分に運ばれなくなり、鉄欠乏性貧血が起こって、集中力の低下や頭痛、食欲不振などにつながることがあります。

 鉄分には、肉や魚などの動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」と、野菜などの植物性食品に多く含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。動物性食品に多く含まれるヘム鉄のほうが非ヘム鉄よりも体内への吸収率が高いことがわかっています。

今回は、鉄分について特集いたします。

鉄分の種類

 鉄分は、肉類、魚介類、藻類、野菜類、豆類に多く含まれています。

 食品に含まれている鉄分には、大きく分けてヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。鉄の基本的な役割を説明しながら、この2つの鉄にはどのような違いがあるのかをお話します。

 全体的に、鉄分は吸収率が低いミネラルですが、たんぱく質、アミノ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)と一緒に摂取すると、吸収が高まることが知られています。

ヘム鉄

 ヘム鉄は、赤身肉や魚などに多く含まれ、たんぱく質と結合した状態で存在する鉄成分です。非ヘム鉄に比べて、体内での吸収率が高いという特徴があります。

非ヘム鉄

 非ヘム鉄は、野菜や牛乳、卵などに多く含まれている鉄成分で、ヘム鉄と異なり、たんぱく質に結合していない無機鉄のことを指します。

 鉄はミネラルのなかでも吸収率が低い成分とされていますが、特に低いのが非ヘム鉄です。非ヘム鉄の吸収率を高めるには、たんぱく質と結合した状態のヘム鉄を利用したり、ビタミンCと合わせて摂取したりすると良いとされています。

鉄の必要量

 鉄の必要量は、年齢や性別、月経の有無によって異なります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を見てみると、一日の摂取目安量は以下のようになっています。

男性、18~74歳:7.5mg、75歳以上:7.0mg。月経のある女性、18~49歳:10.5mg、50~64歳:11.0mg、月経のない女性、18~64歳:6.5mg、65歳以上:6.0mg。

鉄の必要量

男性 18〜74歳 7.5mg
75歳以上 7.0mg
女性 月経あり 18~49歳 10.5mg
月経なし 18~64歳 6.5mg
65歳以上 6.0mg

※日本人の食事摂取基準(2020年版)より

鉄分の不足

 鉄が不足すると、主に、貧血(鉄欠乏性貧血)、集中力の低下、食欲不振、頭痛、疲れやすい、筋力低下などの症状が現れます。鉄が欠乏した場合、赤血球に含まれるヘモグロビンが減少し、赤血球数も減るため「鉄欠乏性貧血」となり、体に十分に酸素が供給されなくなります。貧血になると、集中力の低下や食欲不振、頭痛などの症状を引き起こします。

 また、筋肉に存在するミオグロビンが減少すると、疲れを感じたり筋力が低下したりするおそれがあります。

 鉄不足による貧血を予防するには、吸収されやすいヘム鉄を積極的に摂取するほか、吸収率を高めるたんぱく質やビタミンCなどを一緒に摂取することが重要です。その他、赤血球の合成に関わる葉酸やビタミンB12も摂りましょう。(ビタミンB12は動物性のものに含まれます。)

 吸収率が低い非ヘム鉄も、一緒に食べる食品を工夫することで、吸収率を高めることができます。

 反対に、米ぬかなどに多く含まれるフィチン酸、紅茶や緑茶に多く含まれるタンニン、ほうれん草などに含まれるシュウ酸は鉄分の吸収を抑制するため、注意が必要です。

 また、鉄分の吸収率は体内の鉄貯蔵量が少ない場合は高くなり、多い場合は低くなります。

 このように、食事に含まれているヘム鉄と非ヘム鉄の割合や、吸収を高める他の栄養素の含有量、体内の鉄分の貯蔵状態によって変わりますが、鉄分の吸収率はおよそ15%程度になると見積もられています。