健康コラム

Health column

食物繊維のはなし

「第6の栄養素」として話題の食物繊維

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 たんぱく質・脂質とともに「エネルギー産生栄養素(三大栄養素)」と呼ばれるものの一つである炭水化物は糖質と食物繊維に分けられ、消化できるものを糖質、消化できないものを食物繊維と呼んでいます。以前は三大栄養素と呼ばれていましたので、そちらの方が馴染みのある方も多いかもしれません。

エネルギー源となる栄養素

 「食物繊維」は、昔は身体に必要なものだと思われていませんでしたが、最近は整腸作用などの身体の中で有用な働きをすることが注目され「第6の栄養素」として話題になっています。

 また、「食物繊維といえば便秘対策」。そんなイメージをお持ちの方も多いと思います。実は、食物繊維の働きは、それだけではありません。

 食物繊維は小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する食品成分です。便秘の予防をはじめとする整腸作用だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められています。

整腸作用

 今回は、そんな食物繊維について特集いたします。

食物繊維の種類

 食べ物として体内に取り入れられた炭水化物は、体内の消化酵素で消化されエネルギー源となる糖質と、体内の消化酵素では消化できない食物繊維になります。

 さらに、食物繊維は水に溶けない「不溶性食物繊維」と、水に溶ける「水溶性食物繊維」の2種類があり、これらをまとめて食物繊維と呼んでいます。

 日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、減少傾向にあります。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています。

(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより)

 厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。

(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」より)

 欧米においては、一日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスク低下が観察されるとの研究報告があり、体内でコレステロールから作られる胆汁酸の体外(便中)への排泄を促進し、血中コレステロール値を下げるとされています。

 また食後の糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑える作用があるため、最近では特定保険用食品(トクホ)や、機能性表示食品として、難消化性デキストリンなどが利用されることが多くなっています。

 さらに便の量を増加させるとともに、腸内の腸内細菌のうち、善玉菌の割合を増やし、腸内環境を良好に整える作用も知られています。

食物繊維を多く含む食品

種類

主成分

多く含む食品

用途

不溶性食物繊維

セルロース

穀類・豆類・野菜

便のカサを増す

腸壁を刺激する

(腸の蠕動運動を促す)

ヘミセルロース

小麦ふすま、大豆、穀類、ごぼうなど

リグニン

豆類・小麦ふすま・カカオ豆・ココア豆

キチン

エビ殻・カニ殻・コオロギ・キノコなど

水溶性食物繊維

ペクチン

熟した果物、芋類

便を軟らかくする

便の滑りをよくする

グルコマンナン

こんにゃく

ガム質(グアーガムなど)

大豆・大麦・ライムギ等の麦類

アルギン酸

わかめ・昆布

身体のサインから見る摂取量

 身体のサインから見た食物繊維の必要量は「一日に一回、規則的に排便がある」ことがひとつの目安になります。この状態にある人の排便量は、一日に約150g(見た目ではMサイズの鶏卵で約3個分)であることがわかっています。まずはこの排便量を作り出すための食物繊維を食事からとれているかが重要です。

 また、日本人の現代の食生活では、食物繊維を摂り過ぎるということはほとんどないそうです。しかし、サプリメントなどを多量に摂取すれば摂り過ぎになることもあり、食物繊維を摂り過ぎてしまうと、カルシウムやカリウムなどをはじめとするミネラルの吸収を妨げたり、便秘や下痢を助長することもあります。

 毎日の食事のなかで、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく摂取することを心がけましょう。