身近で採れるものを、まるごと食べよう
太陽の光をふんだんに浴び、葉を広げ、実をつけ、たくましく育っていく作物。土の中では、どっしりはった根が、土中の水分と栄養素を吸収して成長を支えています。そのありように思いを馳せると、それらを食べる人間は、土を食べて生きているのに等しいと気づかされます。いのちを育む食の基本は、身土不二。これは「人と土(環境)は一体で、人のいのちと健康は食べもので支えられ、食べものは土(環境)が育てている」という考え方です。たとえば、暑い国では水分を補給してくれる南国特有の果物や野菜が育ちます。そこで暮らす人々にとっては、暑さをしのぎ、体調を整えるために必需品ですが、寒い地方や冬の日本で食べたらからだが冷えてしまいます。慣れ親しんだ環境と、その地で採れた食べものをいただくことが、いのちと健康を育むのです。このところ、「地産地消」という言葉をよく耳にしますが、これも身土不二と同じ出発点に立った考え方といえます。できるだけ自分が住んでいる土地の近くで採れたものを、それが難しい場合でも国産のものを食べるようにしましょう。地元でとれたものは、新鮮で、安く、味も抜群です。輸送の時間がかからないため、ポストハーベストも不要ですし、ガソリンなどのエネルギー資源を最小限に抑えます。そういう意味では、身土不二は環境にも優しい食べ方なのです。それは、国内の農家を応援し、40%まで落ち込んでしまった自給率を上げることにもつながります。
一物全体は、生命あるものを丸ごと食べるという考え方です。人間が頭のてっぺんから足の先まで余分なものはひとつもないように、野菜も穀物も魚も、生きているものには余分なものはありません。野菜は根から葉まで、小魚は頭から尾まで、全部食べます。お米なら玄米、小麦粉なら全粒粉ということになります。たとえば、スーパーマーケットではよく葉の部分が切り落とされただいこんが並んでいますが、ビタミンCの豊富な葉を捨ててしまうのはもったいない話です。にんじんに含まれるβ-カロテンは皮の下の部分に最も多く含まれていますし、じゃがいもは皮つきのまま調理すると、ビタミンCの損失を最小限に抑えることができます。野菜は皮をむかず、水にさらさず、ゆでこぼさず、が基本です。アクもうまみのうちと考えましょう。ゆえに、化学合成農薬の使用をできるだけ控えた野菜を選ぶことも大切です。また、「捨てるところがない」ということは、すなわちゴミも出ないので、結果的にエコロジカルな食べ方にもつながります。