旬の食べものは生命力の源
昔から「初ものを食えば七十五日生きのびる」「初ものは縁起がいい」などといわれてきました。まだ栄養学などない時代に伝え継がれてきた初ものへの感謝、そこには無病息災を願う先人の知恵がつまっています。日本の風土の特色は、四季があることです。季節ごとの食材があり、それを上手に食べることでからだのバランスを整え、健康を保ってきました。
冬の間、土中で眠っていた種が次々と芽を出すように、春は生きとし生けるものが活動を始める季節です。山菜や野草がおいしくなる春には「にがみを盛れ」と言われてきました。これは、芽吹く時期には、にがみのあるものを食べ、冬の間に体内にたまった老廃物を出して、ビタミンやミネラルを摂り入れようという知恵なのです。 また、春の陽光をふんだんに浴びて育った春野菜には、たくさんの葉緑素とカロチノイドなど抗酸化力のある色素が含まれています。生命力あふれる旬のものが持つ力が、私たちのからだに新しい細胞を作り出します。暑い夏には「水気や酸味」。きゅうり、なす、トマト、スイカなどウリ科やナス科の夏野菜は、からだを冷やし、体調を整えてくれます。そして秋になったら、「秋茄子は嫁に食わすな」。一般には、「秋にできるナスは味がよく、もったいないから嫁に食べさせるな」という意味で使われることが多いようです。しかし、本来は「ナスはからだを冷やすので大事な嫁に食べさせるな」という意味が込められていました。これは夏の食習慣のまま、からだを冷やすナス科やウリ科の野菜を食べ続けてはいけないことを教えています。夏の太陽の恵みを受けて甘味を増した野菜や果物、良質な油(ドコサヘキサエン酸:DHAやエイコサペンタエン酸:EPA)ののった旬の魚(イワシやサバなど)をたっぷり摂って、寒い冬に備えましょう。冬は、寒さからからだを守るため、からだを温める根菜(ごぼう、にんじん、れんこんなど)や脂肪類をたっぷり摂ります。