健康に優しい 7つの提案

5.和テイストの発酵食品で免疫力をアップする - みそ、しょうゆ、酢、漬けものなど伝統食品を -

日本の食文化を支えてきたもうひとつの主役は発酵食品です。湿度が高く梅雨という独特の季節をもつこの国で、食べ物を保存しておくのは並大抵の苦労ではなかったはずです(今のように冷蔵庫などなかったわけですから)。その中で生み出されたのが発酵食品です。しょうゆ、みそ、酢、漬け物・・・。いずれも麹や酵母といった微生物を使って、穀類や野菜、豆などを発酵させ、素材の腐敗を防ぐとともに、そこには、植物性の乳酸菌がたっぷり含まれています。発酵という知恵で安全な食生活を送ってきた日本の伝統食材から学ぶものはたくさんあります。

しょうゆ ~麹が命。天然醸造の長期熟成のものを選ぶ

しょうゆが生まれたのは江戸時代、当時は高価なものでした。しょうゆを「紫(むらさき)」と呼ぶ由来は、高貴な色である「江戸紫」にあやかったといわれています。しょうゆは、大豆と小麦と塩から作られます。「しょうゆは麹(こうじ)が命」といわれます。大豆と小麦をまぜて麹菌を繁殖させてもろみをつくり、酵母菌と乳酸菌の働きにより発酵させたものです。発酵中、大豆タンパクが麹菌によって分解され、約20種類のアミノ酸に変わるとともに、うまみのもととなるペプチド類が生成されます。しょうゆは調味料のひとつと思われがちですが、味とうまみと栄養分がたっぷりつまった伝統食なのです。しょうゆを選ぶときは、有機丸大豆や国産丸大豆、国産小麦、天日塩を使い、伝統的な製法=天然醸造の長期熟成(ふた夏以上寝かせて、ゆっくり醸造)で作られたものを選びましょう。このような伝統製法で作られた醤油には、発酵過程で発生する酵母や乳酸菌、ミネラルが多く含まれ、自然の香りやまろやかさも生きています。また、主な成分に、高血圧を予防するペプチドや抗酸化作用のあるメラノイジンも含まれています。

みそ ~自然に発酵熟成させたものを料理に合わせて使う

みその歴史はさらに古く、遠く飛鳥時代までさかのぼり、その起源は中国大陸にあるといわれます。以来、日本人の食生活の中で育まれ、全国それぞれの地域で、原料事情や気候風土、好みに合わせて、さまざまな特色を持ち「ふるさとの味」として作られるようになりました。みそは、蒸した大豆に米や麦の麹と塩を加えて発酵させて作りますが、使用される原料や製造方法、熟成期間などによってさまざまな種類があります。原料からみると、米みそ、麦みそ、豆みその3種類と、これらを合わせた調合みそがあります。また、「甘口、辛口」といった味によっても分けられます。辛さは食塩の量や麹歩合(大豆に対する麹の比率)によって加減します。また、できあがりの色によって、「赤みそ、白みそ」に分かれます。色の違いは、大豆の種類、製造方法や発酵熟成期間の違いによるものです。発酵の過程で大豆のたんぱく質がアミノ酸やペプチドに変わり、でんぷんは麹菌中のアミラーゼによって甘味成分のブドウ糖に変わります。気候風土を利用して自然に発酵熟成させたものを使いましょう。天然のみそは生きた酵素を含み、消化を助けます。タンパク質、ビタミン、ミネラルなど、バランスがよく優れた機能をもつ食品です。

酢 ~米酢をベースに自然発酵、熟成のものを

酢は人類が作った最古の調味料と言われ、5世紀頃には中国から日本に伝えられたとされています。稲作文化であった日本では、古くから米酢が使われてきました。米酢は蒸したうるち米に麹を加え糖化させ、水を加えて酒母を作り、これに酵母を加えてアルコール発酵させたのち、酢酸菌を加えて発酵させ、2~3ヶ月以上熟成させて作られます。お米をたっぷり使った米酢には約15種類の天然アミノ酸と約70種類もの有機酸が含まれます(安価なものはアルコールを使用)。昔ながらゆっくり時間をかけて自然発酵(静置発酵)で作ったものを選びましょう。酢の成分はクエン酸などの有機酸とアミノ酸、そして酢酸です。クエン酸は乳酸と結合し、炭酸ガスと水に分解してエネルギーとなるほか、カルシウム等の吸収を助けてくれます。また、酢は胃液の分泌を促し、消化酵素の働きを活発にします。疲れたとき、食欲のないとき、夏バテのときなど、食欲を増進させます。

漬け物 ~家庭で作ることのできる発酵食品の代表格

漬け物は、野菜や果物、肉、魚を、塩・ぬか・みそ・しょうゆ・お酢・香辛料などに漬けて発酵させた、植物性乳酸菌が豊富な保存食です。その歴史は古く、大和時代には塩漬けによる食品の保存が行われたとされています。平安時代にはみそやしょうゆのもとである「醤(ひしお)」にきゅうりを漬けたものや、穀物や大豆の粉に塩を混ぜた床に野菜を漬けたもの(ぬか漬けの前身)、奈良時代には支那甘酒の系統汁糟(じゅうそう)の搾りかすになすや瓜をつけた糟漬が広がりました。江戸時代には、みそ汁と漬け物が習慣化され、各地の気候や風土、産物にあった漬け物が家庭で作られていったのです。漬け物は家庭で作ることのできる一番身近な発酵食品です。ぬか漬けを作る際のぬか床は、精米するときに除かれる玄米の表皮・ぬか層・胚芽で、ビタミンB群・Eが多く含まれます。また、ぬかの酵素の働きと乳酸発酵により、漬けた素材にほどよい酸味と風味が生まれます。しょうゆ漬けにしたきゅうりは生よりも鉄分が多めで、抗酸化作用をもつβ-カロテンやビタミンやミネラルも含みます。

これら発酵食品は、腸内細菌のバランスを保ち、免疫力を高める力があるといわれます。腸内にはさまざまな細菌がいますが、体調を整える善玉菌のひとつが乳酸菌です。善玉菌を増やして腸内細菌のバランスを良くすると、免疫力が高まります。日本の伝統食の中に生き続けてきたしょうゆ、みそ、酢、漬け物など植物性乳酸菌を含む発酵食品を毎日、摂るようにしましょう。また、多少、値段が高くても、無添加できちんと発酵熟成され、殺菌・滅菌されていない良質なものを選ぶようにしたいものです。

発酵食品 - 豆知識

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アミノ酸
アミノ酸はタンパク質を作っている有機化合物の総称。つまり、アミノ酸というユニットが集って組み立てられたものがタンパク質というわけです。このアミノ酸は、人間が生命活動をする上でなくてはならない栄養成分です。アミノ酸にはさまざまな種類がありますが、そのうち、からだを作っているアミノ酸は全部で20種類。このうち9種類は、人間の体内で合成できないか、または十分に合成されないため、食品から摂取しなくてはならないため、「必須アミノ酸」と呼ばれます。必須アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンの9種類です。
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オリゴペプチド
タンパク質は体内で消化酵素の働きによって分解され、アミノ酸となります。完全にアミノ酸となる前の段階、アミノ酸が2~9個つながった状態をオリゴペプチドといいます。
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ペプチド
アミノ酸の大きな集合体であるタンパク質が分解されてできる、アミノ酸の小さな集合体のことをいいます。
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メラノイジン
メラノイジンはアミノ酸化合物と糖の化学反応によって起こる化合物。大豆にもともと含まれているわけではなく、大豆が発酵・醸成していく過程で生じます。赤褐色をした色素のために、赤みそが赤褐色になります。しょうゆや赤みそに多く含まれ、腸の働きを活発化し、基礎代謝をあげ、活性酸素を除去する働きがあるといわれます。
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ブドウ糖
ブドウ糖はグルコースともいい、脳やからだを動かすエネルギー源となるものです。加水分解で得られる最小単位の糖類(単糖類)のひとつ。果物や果汁などにも多く含まれます。
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クエン酸
クエン酸はレモンなどの柑橘類や梅干し、お酢などに含まれるすっぱい成分です。人間はからだの中に取り込んだ食べものをエネルギーに変えるしくみを持っています。炭水化物は分解されてブドウ糖になり、ブドウ糖はさらに代謝されアセチルCoA(コーエー)という物質になります。これがエネルギーを生み出す物質です。そして、このアセチルCoAが特定の物質と結合してクエン酸になります。クエン酸はエネルギーを出しながらからだを循環し、エネルギーの素であるアセチルCoAと結合しながら循環していきます。これを「クエン酸サイクル」と呼びます。クエン酸を摂取すると、これらのエネルギー産生システムを活性化することにつながるといわれます。